従業員との問題

従業員との問題

従業員との問題

会社は「ヒト、モノ、カネ」で成り立つと言いますが、その中でも「ヒト」、すなわち優秀な従業員を確保することは会社にとっての最重要課題です。

労務問題

労務問題

中小企業の法律問題の中で最も相談件数が多い分野のひとつが、従業員とのトラブル、すなわち労務問題です。残業代の不払い、長時間の残業、就業規則の不備等一見些細に思われた問題が、時に労働組合をも巻き込んで、経営の根幹を揺るがす大問題になることもあります。
また、従業員との間のトラブルが頻発すると、優秀な従業員の確保が困難になり、中長期的な会社の成長は困難になります。
(1)労務体制の整備のサポート
労務トラブルは、労働日数(有給休暇)・賃金(残業代)・時間外労働の問題等、実に多岐に渡りますが、経営者としては、これらの労務問題について、然るべきルールをきちんと定め、当該ルールを遵守しながら労務問題に対処することが最も効果的な予防方法です。

このルールの最も基本的なものは「就業規則」です。常時10人以上の従業員が働く会社には、「就業規則」を定め、行政官庁に届け出る義務があります。従業員が10人未満であっても、近いうちに10人を超えることが予想される場合には、やはり、あらかじめ「就業規則」を定めることを考えるべきです。

「就業規則」には、如何なる会社でも必ず記載されなければならない事項、制度を導入する場合は必ず記載されるべき事項、法令上は記載義務は無いが、定めて置くことに意義がある事項等々ありますので、導入の際には専門家の助言を得ることが重要です。
(2)労務トラブル発生時のサポート
労務体制が不十分なために問題が顕在化してしまった場合には、問題の所在を的確に見極め、然るべき対応をした上で、一刻も早く問題を解決するとともに、再発予防策を講じることが重要です。

特に、従業員から労働審判を起こされた、労働訴訟を起こされたなどといった場合には、スピーディかつ、適切な対応が求められます。

労務トラブルに費やす時間・手間を最小限に食い止めることが、会社にとっても従業員にとっても最善であることは言うまでもありません。
具体的な労務紛争が発生した場合、いづれも、できるだけ早くご相談下さい。
(3)解雇(内定取消し・試雇解雇・整理解雇)の問題
労務問題の中でも、特に大きな問題は、従業員の「解雇」です。「懲戒解雇」については、次項「従業員の不祥事の問題」の「懲戒処分の問題」の項目をご参照下さい。

「懲戒解雇」以外にも、「解雇」の問題には、「内定取消し」「試雇解雇」「整理解雇」「雇い止め」と様々なケースがあります。
内定の取消し
会社が従業員の雇用を決定して内定を通知した後、内定通知後の事情の変化を理由とした「内定の取消し」が許されるかという問題です。
会社から言えば、「まだ入社前だから解雇ではない」という感覚かもしれませんが、法的には、内定通知を出すことにより、「始期付且つ解約権留保付」の労働契約が成立すると理解されていますので、「内定の取消し」は「解雇権の行使」すなわち「解雇」の一場面です。
従って、「目的に照らし客観的に合理的な理由があって、社会的に相当として是認できる」と判断できない場合には、「解約権の濫用」に当たるとして、「内定取消し」が違法・無効とされます。
結局、個別具体的な事情に基づく判断になりますが、「客観的に合理的」と言われる場合とは、一般的には①内定当時に予測不可能だった不況の深刻化で、会社の人員計画を大幅に変更せざるを得ない場合、②内定時に申告していた経歴等の重要部分に虚偽があったことが判明した場合、③病気、怪我などにより、期待される勤務ができなくなった場合等が考えられます。
本採用の取消し
会社によっては、従業員を正式に入社させた後、一定期間を「試雇期間」と設定し、この期間中に正規従業員としての適格性を判断して、本採用とするか否かを決める場合があります。このとき、「試雇期間」終了時に本採用を拒否できるか否かが、「本採用の取り消し」の問題です。
「試雇期間」とは、法的には、一定の条件下で解約することができる権利を留保した、労働契約と理解されています。従って、「本採用の取消し」も「解雇」の一種ということになります。
この場合も、「内定取消し」同様、「目的に照らし客観的に合理的な理由があって、社会的に相当として是認できる」か否かで適法性が判断されます。
しかも、「内定取消し」と比較しても、すでに入社させて、従業員側には正規従業員として雇用されることの期待が高いことから、この従業員側の「期待権」を保護する必要性はさらに高く、「本採用の取消し」が「解雇権の濫用」に当たるか否かにあたっては、「内定取消し」よりもさらに会社側に慎重な対応が必要です。
整理解雇
「整理解雇」とは、経営不振等を理由として、企業の経営の合理化のために余剰になった人員を整理する方法として行われる解雇をいいます。
会社からすれば、「生き残りをかけた決断なんだから、認められないのは辛い」ということになりそうですが、実際には、業績不振を体の良い口実にして、辞めてもらいたい従業員を辞めさせようとするケースもあり、やはり、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められない場合には、解雇権の濫用として解雇は無効になります。

そして、「整理解雇」が問題となる場合には、通常、次の4つの要素を総合して、その適法性が判断されることになります。
いずれも、会社側が主張し、立証することが必要です。
  • 人員削減の必要性があること
  • 解雇を避けるための努力が尽くされたこと
  • 解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
  • 手続が妥当であること
従業員の解雇について、法的には如何に厳しい基準が適用されるかがお分かりいただけたかと思います。
(4)雇い止め
「雇い止め」とは、会社が、雇用期間に定めのない労働契約を締結している所謂正社員ではなく、期間を区切った労働契約(有期労働契約)を締結している従業員について、期間満了に伴い、労働契約の更新を拒絶することができるかという問題です。
会社からすると、「期間が満了したのだから、更新するか否かは会社の自由だ」と言いたいかもしれませんが、事はそれほど単純ではありません。
特に、すでに何度も契約が更新されてきた場合、従業員の「期待権」を保護する必要があること、使用者と従業員のバーゲニングパワーの差異等も考えて、法的には、「雇い止め」も「解雇」の一場面として、「解雇権の濫用」に当たるか否かが判断されます。
全ては個別具体的な事情に因りますので一概には言えませんが、通常は
  • 業務の性質・内容
  • 契約上の地位の性格
  • 当事者の態様
  • 更新手続の適正性や実態
  • 類似の業務に従事する他の従業員の取扱い
等の要素を総合的に判断して、「雇い止め」が適法か否かが決まります。

従業員の不祥事の問題

従業員の不祥事の問題

会社が労務問題についてきちんとした体制を作っていても、従業員が不祥事を起こすことにより、会社に損害が発生することは少なくありません。

特に、従業員の懲戒処分の問題、退職した従業員との間のトラブルには法的にも慎重な対応が必要です。
(1)懲戒処分の問題
 「懲戒処分」全般については、「キャリアライフのサポート」の「懲戒処分」をご参照下さい。

 懲戒処分には、戒告・減給・降格・出勤停止・懲戒解雇等がありますが、その中でも「懲戒解雇」は、言わば懲戒処分の極刑に当たります。通常は、 解雇予告も予告手当も支払われず即時になされ、退職金の全部または一部も支払われず、再就職の重大な障害にもなり得るという、従業員の将来にも大きな影響を与える厳しい不利益処分です。
一般的に懲戒処分が適法と認められるためには、
  • 懲戒処分の根拠規定が就業規則等に明記されていること
  • 従業員の問題の行為が、懲戒処分の根拠規定に該当すること
  • 懲戒処分の根拠規定に該当するだけではなく、「懲戒解雇」の処分とすることに相当性があること
  • 「懲戒解雇」とするために、きちんとした手続が採られていること
という要件を満たす必要がありますが、とくに「懲戒解雇」の適法性は、会社にとっては非常に厳しく、極めて限定的に解釈されるのが通常です。

 例えば、懲戒処分の代表的な理由となり得る「職務懈怠」についても、単に就業規則に「無断欠勤は懲戒処分の対象となる」とされているだけでは「懲戒解雇」がすぐに認められる訳ではありません。
上司の繰り返しの注意や警告がなされたにも拘わらず、無断欠勤を何十回も繰り返した、戒告・減給処分をしたにも拘わらず態度が全く改善されなかったというようなケースでないと「懲戒解雇」は有効と認められない傾向があります。
 また、「職務規律違反」についても、横領・背任・会社所有品の窃盗・同僚や上司に対する暴行行為等の明らかな犯罪行為でもない限り、即「懲戒解雇」が有効と認められることは多くはありません。

 いずれにせよ、従業員を「懲戒解雇」にする場合には、就業規則等に根拠規定があるかだけではなく、「客観的に合理的な理由」と言えるか否か、より軽い処分ではなく、懲戒解雇処分とすることに「社会通念上相当である」と言えるか否かという、法的な評価が必要になります。
(2)退職した従業員とのトラブル
退職した従業員との間で問題となることが多いのは、「企業秘密(情報)漏洩」の問題です。
従業員である間は、誰しも、企業が管理・保有する情報を漏洩することは違法であるという認識をもっていますから、「不正な目的を有している場合」等の例外的な場合以外は、あまり問題にはなりません。

ところが、退職後の「企業秘密(情報)の漏洩」については、不正な目的を有している場合のみならず、獲得した技術情報や営業情報を転職先で無意識に使用することがあり得ます。このような事態の対策として、多くの企業では、就業規則や従業員との契約において、退職後においても「秘密保持義務」「競業避止義務」を設定しています。

しかし、退職後の「秘密保持義務」や「競業避止義務」は、憲法が保持する従業員の「職業選択の自由」や「営業の自由」を制限することになるため、無制限に認められるわけではありません。
使用者の方にノウハウの流出を防ぐ、顧客を保持する必要がある等、守られるべき正当な利益・目的があり、その利益・目的との関係で、競業を禁止される期間、場所、業務の種類などの制限が合理的範囲にとどまっていることが必要になります。

退職する従業員との間で、「秘密保持義務」や「競業避止義務」を定める契約書を締結したいとき、また、退職した従業員によって当該契約に反し、自社の機密情報を漏洩・使用されたという場合、速やかにご相談下さい。

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